2010年3月14日日曜日

ダークマター(暗黒物質)について


「死生観」でふれたダークマター(暗黒物質)について、興味深い産経新聞の記事があったので下記に転載します。 写真はLHCです。

『宇宙はどのようにして始まり、これからどうなっていくのか。東京大学の数物連携宇宙研究機構(IPMU)は、物理学、天文学、数学の研究者が連携して宇宙の根源的な謎に挑む、世界に類のない研究機関だ。外国人が6割を占める国際的な頭脳集団を束ねるのは、米カリフォルニア大バークレー校教授からIPMU機構長に就任した村山斉さん。「これからの10年で、物理学は大きく変わる」と語る村山さんに、2010年代の物理学の入り口に案内してもらおう。(中本哲也)
 昨年12月、米国の研究チームが「暗黒物質(ダークマター)らしい粒子反応を検出した」と発表した。
 暗黒物質は銀河や星の形成に寄与しているが、目には見えない正体不明の粒子。「米国チームの観測結果は、発見といえるような段階ではないが、2、3年後には、暗黒物質を捕まえられる可能性が高い」と、村山さんは話す。

 昨年11月に再稼働した欧州合同原子核研究機関の大型加速器(LHC)では、暗黒物質の生成が期待される。IPMUも参加している東大を中心とする研究グループは、2月から稼働する岐阜県の神岡鉱山地下の大型観測施設「XMASS(エックスマス)」で、宇宙に存在する“天然”の暗黒物質検出を目差す。
 LHCで生成されるのは超対称性粒子と呼ばれる未知の素粒子の一部で、これが暗黒物質の有力候補とされる。
 「XMASSは米国の観測施設よりもはるかに大規模で、高精度の成果が得られるはず。LHCの成果と比較することで、暗黒物質の正体に迫れる」
村山さんは、超対称性粒子に関する理論で、20代のころから注目された。超対称性粒子とは、目に見える普通の物質(原子)を構成する素粒子に対応する未知のパートナーのこと。その理論は難解だが「宇宙の爆発的膨張(インフレーション)など、謎に包まれたさまざまな現象が、超対称性を考えることでうまく説明できる」という。
 宇宙の構成要素のなかで、銀河や星をつくる普通の物質は4%に過ぎない。「万物は原子でできているというのは大うそなんです」。大きな重力で普通の物質を引き寄せている暗黒物質は宇宙の23%を占める。残りの73%は、暗黒物質以上に得体の知れない「暗黒エネルギー」で、宇宙を加速膨張させている。
 近年の観測技術の向上で、宇宙の起源や進化について多くの情報が得られた。村山さんは「宇宙の96%について、私たちは何も知らないことが分かった。“革命”の準備ができたのです」と語る。
 17世紀、ニュートンは地上の物体と宇宙の天体を統一する重力の法則を見いだし、人類の宇宙観を変えた。19世紀に電気と磁気を統一したマックスウェルの理論は、量子力学の確立につながり、物理学の常識を劇的に変えた。
 21世紀の物理学者が目差すのは、重力と量子論を統一し、自然界の4つの力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)を1つにまとめることだ。目に見える普通の物質と、目に見えない暗黒物質や暗黒エネルギーが統一され、「新しい物理学」に基づく新たな宇宙像が描かれるはずだ。ニュートンが重力の法則を記述するために微分・積分学を編み出したように、「新しい物理を表現するには新しい数学が必要になる」と、IPMUの設立理念を説明する。
 千葉県柏市の東大柏キャンパスに今月、IPMUの研究棟が完成した。現在約60人いる研究者の6割は外国人で、公用語は英語。実験と理論、物理学、天文学と数学の分野を超えた共同研究が本格化する。
 指揮者であり、素粒子論のプレーヤーでもある村山さんは「どんな成果が生まれるか、私自身がワクワクしています」と話した。』

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